中風(脳梗塞)

脳梗塞(中風)

中風とは、突然の昏倒、人事不省、口眼歪斜、半身不随、言語障害の病症、もしくは昏倒がなく、口眼歪斜のみの病症も含まれる。卒中とも称する。

 

脳出血、脳梗塞、脳血栓、クモ膜下出血、脳血管痙攣、ウイルス性脳炎、顔面神経麻痺の治療には本証を参照する。

 

脳梗塞に伴う症状の種類と原因を表した図

 

中風の病機は肝腎陰虚を本として、下記に示す要因により発病する。

虚:陰虚、気虚。

火:肝火、心火。

風:肝風、外風。

痰:風痰、湿痰。

気:気逆。

血:血瘀

『傷寒論・弁太陽病』の「中風」との区別に注意する。

 

中風の種類を表した図

 

中風の種類を表した図

 

<弁証論治>

1.中経絡

(1)絡脈空虚、風邪入中

【症状】手足麻痺、筋肉皮膚感覚障害、突然の口眼歪斜、言語不利、口角流涎、重症の場合は半身不随。あるいは悪寒、発熱、肢体拘急、関節酸痛を伴う。苔は薄白、脈は浮数である。

 

【証候分析】正気不足、脈絡空虚、衛外不固、気血衰弱、風邪侵入、気血痺阻、筋脈失養のため、口眼歪斜、言語不利、口角流涎、半身不随をみる。風邪侵入、営衛不和のため、悪寒、発熱、肢体拘急、関節酸痛をみる。苔が薄白、脈が浮数は表邪入中の  証候である。

 

【治法】怯風通絡、養血和営。

 

(2)肝腎陰虚、風陽上擾

【症状】平素眩暈、頭痛、耳嗚、目眩、腰酸膝軟。突然の口眼歪斜、言語障害、半身不随。舌質は紅、苔は黄、脈は弦細数または弦滑である。

 

【証候分析】腎陰虧虚、肝陽上亢のため、眩量、頭痛、耳鳴、目眩をみる。舌質が紅または苔が黄、脈が弦細数または弦滑は陰虚陽亢、痰熱内蘊の証候である。

 

【治法】滋陰潜陽、鎮肝熄風。

 

2.中臓腑

中臓腑は突然の昏倒、人事不省を主な症状とする重症である。中臓腑には閉証と脱証がある。

 

中臓腑の種類を表した図

 

(1)閉証

閉証は突然の昏倒、人事不省、顎関節強直、開口障害、両手を固く握る、大小便閉、肢体強直痙攣を主な症状とする重症である。病因病理の痰火と痰湿の区別で、陽閉と陰閉に分けられる。

 

1)陽閉

【症状】閉証の一般症状のほかに、顔面潮紅、身熱、口臭、呼吸気粗、煩躁不安、大便乾燥。苔は黄脈、脈は弦滑、数はある。

 

【証候分析】肝陽暴張、陽昇風動、気血上逆、痰火相挟、上蔽清竅のために、突然の昏倒、人事不省が生じる。痰熱内阻、風火内閉のため、顔面潮紅、身熱、口臭、呼吸気粗、煩躁不安、大便乾燥をみる。苔が黄膩、脈が弦滑、数は内風痰火の証候である。

 

【治法】辛涼開疲、清肝燻風。

 

2)陰閉

【症状】閉証の一般症状のほかに、顔面蒼白、口唇暗晦、痰涎壅盛、静臥、煩躁(手足を無意識にばたつかせる)なし、四肢不温。苔は白膩、脈は沈滑緩である。

 

【証候分析】痰湿偏盛、風挟痰湿、上蒙清竅のため、痰涎壅盛、静臥、煩躁しないをみる。痰湿が陽気を阻滞し、温煦失司のため、四肢不温、顔面蒼白、口唇暗晦が生じる。苔が白膩、脈が沈滑緩は痰湿内盛の証候である。

 

【治法】辛温開竅、豁痰熄風。

 

(2)脱証

【症状】突然の昏倒、人事不省、目を閉じ、口が開き、呼吸衰微、手は弛緩状態、四肢厥冷、多汗、二便失禁、肢体萎軟、舌痿(舌が萎縮)。脈は微、欲絶(絶えんばかり)である。

 

【証候分析】元気衰微、陰陽離決の傾向があるため、目を閉じ、口が開き、手は弛緩状態、二便失禁など「脱」の症状をみる。正気虚衰、陽気欲脱のため、呼吸衰微、多汗、四肢厥冷、二便失禁、舌痿、脈が微、欲絶をみる。

 

【治法】益気回陽、扶正固脱。

 

3.後遺症

(1)半身不随

1)気虚血滞、脈絡瘀阻

【症状】半身不随、肢体萎軟無力、四肢麻木、顔色萎黄。舌は淡紫、または瘀斑、脈は細渋無力である。

 

【証候分析】気虚で運血不能、気行不能、さらに血栄不能、気血瘀滞、脈絡痺阻のため、肢体運動障害を起こす。

 

【治法】補気、活血、通経。

 

2)肝陽上亢、脈絡瘀阻

【症状】半身不随、患側の僵硬拘急、頭痛、眩暈、耳鳴、面赤を伴う。舌は紅降、苔は黄、脈は弦硬有力である。

 

【証候分析】肝陽上亢、火昇風動、気血上逆、絡破血溢、経脈阻塞のため、上記の症状をみる。

 

【治法】平肝潜陽、熄風通絡。

 

(2)言語不利

1)風痰阻絡:風痰上阻、経絡失和のため、舌強直、言語不利、肢体麻木をみる。治療原則は怯風除痰、宣竅通絡とする。

 

2)腎虚精虧:腎虚不足、精気不昇のため、音声が弱く、失語、心悸、呼吸促拍、腰膝酸軟などをみる。治療原則は滋陰補腎利竅とする。

 

3)肝陽上亢、痰邪阻竅:肝陽上亢、挟雑痰邪、脈絡不通のため、言語不利の他に、肝陽と痰濁の症状を伴う。治療原則は平肝潜陽、化痰開竅とする。

 

(3)口眼歪斜

風痰阻絡による単なる口眼歪斜の者には、怯風、除痰、通絡する。

口眼歪斜、口眼痙攣を伴う者には、平肝熄風する。