中医学の「脳」

脳は髄の集まるところである。「脳は髄の海」といわれている。

古書には「諸髄者、皆属干脳」(いろいろの髄はみな脳に付属する)といわれている通り、髄と脳は、本質的には同じものと認識されている。すなわち現代医学のいう中枢神経そのものであ る。

 

中医学で特徴的なのは、脳、髄と腎との関係を特に強調していることである。経脈上、奇経八脈のうちの督脈は「脊裏に沿って上り、風府に至って脳に入る」 膀胱経は「顛巓(頭頂)より脳に入る」とされている。

 

 

位置と形態:

頭蓋骨内に あり、風府穴にまで至っている 。

 

 

主な生理機能:

精神、思考を主る 。

 

 

脳は精神、思考を主る

有名な李時珍(明代)は「脳は元神の府」脳は神(すなわち高級精神活動)の存在する場所であると説いている。

古人はまた「人之記性、不在心而在脳」(人の記憶力は心にあるのではなく脳にある)といっているように、古くより人間の高級精神活動は脳に存在していることを明言している。また王清任(清代)は「記憶、視覚、聴覚、嗅覚、言語の機能は脳に帰属する」と指摘している。

 

また、脳は感覚と運動を主管している。脳髄の充足は、体力及ぴ精神、神志活動の正常化と関係しており、脳髄が充足していると、持久力もあり、平常時よりも旺盛な体力を示す。しかし、それが不足すると、身体も疲労して力がなくなり、視覚、聴覚にも異常が生じる。脳はきわめて重要な器官ではあるが、中医蔵象学説においては五臓が中心となるために脳の生理機能は五臓に分けて帰属されることになる。

 

心は神を蔵し、喜を主る

肺は塊を蔵し、悲を主る

脾は意を蔵し、思を主る

肝は魂を蔵し、怒を主る

腎は志を蔵し、恐を主る

 

この中でもとりわけ重要なのは、神を蔵する五臓六腑の大主である心と、疏泄を主る(精神情緒を調節する)肝、それに精を蔵し髄を生じ脳を満たしている腎の3つの臓と いうことになる。

 

「心は神を蔵す」とは、基本的に脳の精神活動や思考の機能を指している、また「熱入心包」「痰迷心竅」などは中枢神経系の症状であり、心の陰陽失調や気血失調などでは脳の機能異常を示す症状がみられ、養血安神、開竅、化痰、養心陰、温心陽の薬物は中枢神経系に対して一定の作用をもっている。

 

「肝は疏泄を主る」という生理機能は、精神情緒活動の調節に参与しているから、脳の機能に含まれる。また「肝気鬱結」「肝陽上亢」などでは神経系に関連した症状がみられ「肝風内動」は基本的には中枢神経系の症候であり、疏肝、平肝、潜陽、熄風などの薬食物も中枢神経系に一定の効果を示す 。

 

「腎は精を蔵し、髄を生じ、脳は髄の海」であるから、腎と脳の関係はより密接である。腎精が不足すると、乳幼児では脳の発育障害が生じ、成人、老人では脳の機能低下が現れる。補腎の食薬物は脳の機能改善に一定の効果をもつ 。