問診

問診

現病症を問う

 

問飲食口味(飲食、味を問う)

問飲食口味とは、口渇、食欲、口味を問うことである。

 

1.口渇と飲水

飲水は、水を飲むことであるが、これは、身体の津液の補給にとっては必要である。口渇の有無と飲水の多少を通じて、津液の盈虧(えいき:栄枯)と輸布を知ることができる。

 

(1)口不渇

口不渇とは、口が渇かないことで、津液が未だ損傷されていないことを示し、寒証、痰湿、気虚などの場合によく見られる。

 

(2)口渇多飲

口渇多飲とは、口が渇き、大いに水を飲むことである。これは、津液が非常に損傷されたことを示す。臨床では以下の原因が考えられる。

  • 口渇で、冷たいものをよく飲み、顔面紅潮、壮熱、煩躁、多汗、便秘、舌質が紅で舌苔が黄などの症状が現れるのは実熱証に属する。この場合の口渇多飲は裏熱亢盛津液大傷したため、飲水により水分を補給しようとする行為である。

  • 口渇多飲、多食なのにすぐに空腹を感じ、多尿、形体消痩、神疲乏力、舌質が紅で舌苔が少ないなどの症状が現れるのは消渇病である。これは肺胃腎の陰虚によるものである。

 

(3)渇不多飲

渇不多飲とは、口渇があるが、水があまり飲めないことをいう。これは、津液の軽度損傷と輸布障害の現れであり、陰虚、湿熱、痰飲、瘀血などの場合に見られる。

  • 渇不多飲、午後低熱、盗汗、両顴潮紅、舌質が紅で舌苔が少ないなどの症状が現れるのは、陰虚証に属する。陰液不足で口渇を感じるが、実熱による津液の損傷がないため、不多飲となる。

  • 身熱不揚、頭身困重、脘悶、舌質が紅で舌苔が黄膩などの症状を伴うものは、湿熱証に属する。津液が湿熱により損傷され、また湿熱が体内に留まり、津液の気化を障害するため水液が口まで上らず口渇となるが、体内に湿邪があるので、あまり飲めない。

  • 熱いものを好むが、多くは飲めず、あるいは水を飲むとすぐ吐き出してしまう、その ほか眩暈、頭身困重、舌質が胖大で舌苔が白滑などの症状が現れるのは、痰飲内停に属する。痰飲は陰邪であり胃腸に内停すると、陽気を傷つけ、津液が口には上がらなくなるので、熱いものを好むようになり、また水を飲むと、胃腸にたまる痰飲がさらにひどくなり、胃は和降を失い、飲んだ水を吐き出してしまう。

  • ロが乾くが、すすぐだけで飲みたがらない、舌質が紫暗、瘀斑舌などの症状が現れるのは、瘀血が考えられる。瘀血で気機が滞り、気化できず津液が上がらないので、口が乾く。津液の不足ではないので不多飲である。

  • そのほか、温熱病の営分証の場合にも、渇不多飲が見られる。

 

2.食欲

脾の運化機能、胃の受納と腐熟機能、肝の疎泄機能などは、食べ物の消化と吸収に関わるので食欲のよさと食事の多少を通じ、脾胃肝などの臓腑機能、病症の軽重と予後などを判断できる。

 

(1)食欲減退

食欲不振のことで「納呆」または「納少」ともいう。食欲減退をきたす原因は様々あるが、臨床では以下の原因によるものが多い。

  • 形体消痩、倦怠無力、腹脹、下痢しやすい、舌質が淡白などの症状を伴うものは、脾胃気虚である。久病や素体気虚の患者によく見られる。

  • 脘悶、頭身困重、下痢がち、舌苔が厚膩などの症状を伴うものは、湿阻中焦である。脾は喜燥悪湿なので、湿が中焦にたまると、湿で脾が困らせ、脾の運化作用が影響を受け、食欲が落ちる。

  • 油物を厭い、黄疸、脇痛、倦怠、身熱、舌質が紅で舌苔が黄膩などの症状を伴うものは、肝胆湿熱である。湿熱蘊結で肝が 疎泄を失い、木乗土となり、脾が運化を失い、納少と なる。曖腐呑酸、脘腹脹痛、舌苔厚膩などの症状を伴うものは、食積である。

 

(2)多食易飢

多食易飢とは、食欲旺盛でよく食べるが、食後2、3時間も経つと空腹を感じることであり「消穀善飢」ともいう。臨床では以下の原因によるものが多い。

  • 口渇、心煩、口臭、便秘、紅舌苔黄などの症状を伴うものは、胃火亢盛に属する。胃熱で食物の腐熟機能が亢進するために、多食易飢となる。

  • 多食易飢で下痢を伴うものは、胃強脾弱に属する。胃の腐熟機能が亢進するため食欲旺盛となるが、脾の運化機能が低下するため下痢となる。

  • 形体消痩、頻尿、口渇などの症状を伴うものは消渇病である。

 

(3)飢不欲食

飢餓感があるが、食欲がない、あるいはあまり食べられないことをいう。

お腹が空いて、飢のようで飢ではない、痛みのようで痛くない、ひりひりして落ち着かないことは「嘈雑(そうざつ)」といい、すなわち胸焼けのことである。胃脘嘈雑、形体消痩、舌質紅、舌苔少、などの症状を伴うのは胃陰不足に属する。

 

(4)偏嗜食物

なま米、土 など普通の人が食べられないものを好むものは「偏嗜異物」という。その原因は、はっきりしないが、虫積(ちゅうしゃく:寄生虫)や脾胃の異常が考えられる。

  • 女性が酸っぱいものを好み、月経停止、吐き気、嘔吐、脈滑数などを伴えば、妊娠による生理現象に属し、病態ではない。

このほか、国・地域・民族などによって食生活が異なるので、辛いもの、甘いもの、塩辛い、生もの、油っこいものなどの食物を偏食することがある。これが長く続くと、体質に影響を与える。

  • 甘いものと油っこいものを過食すれば、痰湿が生じやすい。

  • 生ものと冷たいものを過食すれば、陽気が損傷されやすい。

  • 辛いものと香辛料を過食すれば、熱になりやすい。

 

また、患者の食欲の変化により疾病の転帰を判断できる。

  • 食欲がよくなるのは、胃気が回復する兆しで、予後がよい。

  • 食欲が減退するのは胃気衰弱の現れで、予後が悪い。

  • 久病と重病で元々食べられないが、突然食べられるよ うになるのは「除中」と いい、仮神に属し、これは、脾胃の気が絶えんとするときに見られる現象である。

 

3.口味

口味とは、口の味覚である。脾は口に開竅し、ほかの臓腑の気も経脈に沿って口に至るので、異常な味覚は 、脾胃の機能異常や他の臓腑の病変の反映である。臨床では以下のようなものがある。

口淡:

味覚が鈍くなり、何を食べても美味しく感じられないことで「口淡無味」ともいう。

これは味覚減退であり、脾胃気虚と寒証に属する。

 

口甘:

口に甘みを感じることで「口甜」ともいう。湿困脾胃や脾胃虚弱が考えられる。

 

口粘膩:

口が粘々してすっきりしないことで、湿阻が原因である。

 

口酸:

口に酸味を感じることで、肝胃鬱熱と食積が考えられる。

 

口苦:

口に苦味を感じることで、これは実熱証であるが、心火亢盛と肝胆火盛による可能性が最も高い。

 

口鍼:

口に塩辛さを感じることで。その多くは腎病や寒証に属する。

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