暑邪<六淫>
暑は夏季の主気であり、火熱の気から生じるものである。暑邪による発病は明らかに季節性があり、盛夏(夏の盛り)だけに見られ、ほぼ夏至から立秋までに発生する。
また、暑邪は外邪だけに限られ、「内暑」はないと考えられている。
暑邪の性質と発病の特徴
暑邪による発病には特定の季節性がある。2種類の病態がある。
- 暑熱の環境によって生じる日射病、熱射病などの「中暑」。
- 暑い時期にみられる外感病で習慣的に「暑病」といわれ るもの。
熱い気候には2つの特徴があり、炎熱と潮湿である。したがって、暑邪による病変には「暑熱」と「暑湿」の症候がよくみられる。
人体が暑邪に襲われると、高熱・顔面紅潮・大量発汗・口渇・脈数洪大(振幅が大きく速い脈象)などの激しい熱症状があらわれる。 暑邪は人体の皮毛やそう理を開き、津液を消耗させて、身熱・大量発汗・口渇して飲食を欲する・尿赤短少(量の少ない赤い小便が出る)などの症状を示す。
また、津液の蒸発が激しいと、気も津液につられて漏れ出してしまうため、気短(呼吸が短促してとぎれとぎれになる)や乏力(気力が萎える)などの症状があらわれるほか、激しい場合は脱水症状を伴って突然混迷し、昏睡に陥って意識不明となることもある。
暑は「陽邪」その性は炎熱
暑は盛夏の時期に、火熱の気から生じるものであり、陽邪である。炎熱という特性があり、暑邪により起こる病には、高熱、面赤、大汗、煩渇、脈洪数大などの火熱が盛んであるために起こる症状がよく現れる。
その性は昇散、気、津を損傷しやすい
暑は陽熱の邪であり、陽には昇散という特性がある。したがって、暑邪が人体を侵襲するときは、これが作用して腠理が開くと汗が多く出る。また、汗が出すぎると津液を消耗するが、気が津とともに出てしまって気津両傷になる。
身熱、多汗、口渇、喜飲(飲み物を欲しがる)、気短(呼吸促迫)、乏力(無力)などの症状が現れる。
暑邪が心包に侵入すると、突然の昏倒、不省人事、四肢の痙攣などが起こる。
湿邪を伴いやすい
暑季の気候は、炎熱する以外に、雨が多く、湿度が高い。人体が暑邪を受けるときには、しばしば湿邪を伴い、湿邪挟雑証を形成する。
その特徴は、身熱不揚や口渇などの暑による症状だけでなく、四肢の倦怠感、胸悶、悪心、嘔吐、下痢などの湿阻(湿の停滞)による症状が現れる。
