薬膳

薬膳

帰経

中医学では人体の幹線を直行する脈を経絡と呼び、経脈と絡脈の二つがある。食材や薬物は、体内に取り入れた後、これらの経絡に入って運ばれ、臓腑の各部分で効果を発揮すると考えられている。 食材が人体のどこに薬効があるのかを示すのが帰経である。

例えば、寒性の食材は清熱作用をもっているが、経脈の中でも肺系に入って効果を発揮すると考えられている。人体の内外、表裏は経絡で通じているため、内臓に何か疾患があると体表に反応が現れる。互いの関係については中医学の陰陽五行学論によって説明され、薬膳の効果を期待するためにはこれらの知識は不可欠である。

効果がある身体の部位による分類

心経

緑豆・あずき・西瓜・小麦・酒・なまこ・納豆・椎茸・昆布など

肝経

バター・しじみ・いか・トマト・キウイ・いちご・檸檬・桃など

脾経

春菊・きくらげ・そば・大豆・芋・レンコン・さんま・はとむぎなど

肺経

キャベツ・にら・くるみ・びわ・紅花・小松菜・ピーマン・みかんなど

腎経

大麦・豆腐・豚肉・にら・豚足・ピータン・スッポン・なまこなど

胃経

さとうきび・白菜・きゅうり・ほうれんそう・じゃがいも・牛乳など

膀胱経

ナタマメ・トウモロコシ・冬瓜・西瓜など

大腸経

バナナ・胡椒・いちぢく・そば・なず・塩・たけのこ・ニガウリなど

小腸経

塩・あずき・冬瓜・キュウリ・ヤギのミルクなど

多種多様な食材の写真

陰陽五行論からの薬膳

陰陽の立場から薬膳を考えると、薬膳を摂取する人の状態と食材・調理法の陰陽属性がはっきりと理解していなければならない。証には寒熱、虚実、内外、陰陽があり、薬膳には温、清、攻、補の属性がある。

寒証に対して温熱性の薬膳を使い、熱証に対して寒涼性の薬膳を使い、また虚証には補い、実証は攻めるという基本的な原則がある。陰陽依存、陰陽消長などの観点から薬膳を考えれば、薬膳の材料を組み合わせる場合、温性と涼性、補陰と補陽のものを配合しなければならない。

五行と薬膳の関係は「木」は季節は春、肝が盛んになる時期。肝が病むと表裏関係の胆も病む。目の充血や疲れ、筋肉、爪に反応が出たりする。顔色が青くなると肝に異常があると考えることがある。肝を養うには、酸味のある食材。酸味の欠乏や過剰は避け、適量摂取する。 これらの陰陽五行論は、古代における自然発生的な哲学である。

陰陽五行論

陰陽五行の表

気血水からの薬膳

体内の気血水は絶えず生まれ、流れ、消耗されている。気血水が不足したり、停滞した場合、補気、養血、生津あるいは行気、活血作用のある薬膳を摂取することが望ましい。

内臓から薬膳を考えると、病、症状、証は臓腑に関連しているため、薬膳食材の帰経をよく考慮することが重要である。薬膳はそれぞれ異なった内臓にも働きかけている。寒熱補瀉の薬膳から始め、次に疾病の予防に効果的な薬膳を考える。

気に働きかける

補気(気を補う)

気虚(気が不足)へ働きかける

気の生成に関わる脾・肺の機能を高めることで気を増やす

食材:山芋、米、芋、豆、きのこ、牛肉、鶏肉、うなぎ、えびなど

理気(行気:気の巡りを良くする)

気滞(気が滞る)へ働きかける

気の巡りに関わる肝の働きを高める

食材:春菊、三つ葉、ゴーヤ、ミント、レモン、ブドウ、黒酢、梅干し イカ、あさり、しじみ、レバーなど

降気(気の上昇し過ぎを鎮める)

気逆(気が高ぶりすぎる)へ働きかける

上がった気を下げる肺の機能を高める

食材:そば、小麦、豆腐、セロリ、白菜、きゅうり、ごぼう、キウイ、三つ葉、貝類、菊花、茶葉など

血に働きかける

養血(補血:血を補う)

血虚(血が不足)へ働きかける

血の生成に関わる腎・脾・肺の機能を高める

食材:黒ごま、黒豆、黒きくらげ、プルーン、レーズンなどの黒色食材、にんじん、トマト、クコの実など赤色食材、牡蠣、レバー、地鶏、ほうれん草、小松菜など

活血(血の巡りを良くする)

瘀血(血が滞る)へ働きかける

気の滞りや不足、熱の過剰、水の不足を改善する

食材:玉ねぎ、かぼちゃ、生姜、梅干し、山椒、わさび、シナモン 羊肉、イワシ、えび、まいたけ、桃、みかんなど

清営涼血(血の過剰な熱を冷ます)

血熱(血が熱を持つ)へ働きかける

血の巡りと熱に関する、肝・心の働きを高める

食材:トマト、せり、ふきのとう、わさび、アロエ、カシューナッツ、黒きくらげ、レンコン、空芯菜など

水(津液)に働きかける

補陰(水を補う)

陰虚(水が不足)に働きかける

水の生成に関わる腎・脾の機能を高める

食材:豆腐、なす、きゅうり、しめじ、ほうれん草、セロリ、三つ葉、大根 かに、あさり、トマト、ごぼう、昆布、こんにゃく、バナナ、柿など

利潤(水の巡りを良くする)

痰湿(水が滞る)に働きかける

余分な水を取り除く腎・脾・肺に働きかける

食材:海藻、きのこ類、根菜類(大根、にんじん、ごぼう)、冬瓜、こんにゃく イワシ、さんま、緑豆、バナナなど

発病と薬膳

疾病の原因を考えながら食材を選び、配合して調理することで健康増進に寄与できる食材を選び、調理をするとき、自然界(四季と薬膳の関係)のことを考慮する必要がある。薬膳では四季の季候の変化は人間に大きな影響を与えるものとして重要視し、自然現象の変化には風・寒・暑・湿・燥・火の6種類があり、これらを「六気」と呼び「暑」や「熱」は気温が上昇することを指し、そのときに起こる空気の対流が「風」である。

「暑」「熱」が亢進すると「火」となる。気温が低下するのは「寒」温度が増加すると「湿」になり、低下すると「燥」になる。

それぞれの季節には特徴的な六気があり、これをその季節の「主気」という。春は風、長夏は湿、夏は暑、秋は燥、冬は寒。

異常気象や六気の変化が強く現れた場合、季節はずれの季候だったりすると、六気が「六淫」に転化し、人体に障害を与えるといわれる。中医学では「六淫」のことを「六邪」ともいう。

中医診断と薬膳

薬膳を有効活用するためには、中医学の診断方法を学ぶことが不可欠である。望診のでは顔色と舌の観察が最も分かりやすく、証を判別するには望診することが重要である。

顔色が自い、舌質が淡く白い、歯痕、手足の 冷え、下痢、食欲不振、むくみなどがみられると寒証の疑いがある。顔色が紅潮、舌質が赤く舌苔が黄色、ほてり、寝汗、不眠、口渇、便秘などがみられると熱証の疑いがある。

弁証論食

「証」は病態についての中医学的診断であり、弁証は総合的かつ動的にとらえるものです。この ような中医学の整体観と弁証観の考え方を薬膳に取り入れると、弁証論食(具体的な証によって食事を指導)になる。薬膳を作るときには「証」を診断する必要があり、疾病の予防や健康増進のためには、季節や体質を考慮して薬膳食材を選択することが重要である。

中医弁証は病あるいは体質についての中医学の診断方法である。この弁証によって作られた薬膳 は最高のものである。

最も基礎的なものは、寒証、熱証、虚証、実証であり、気血水弁証、臓腑弁証と病邪弁証などを理解することができれば、材料の性味、帰経、効用などを参照し、個人の体質に合った薬膳を作ることができる。 中医学基礎理論を基に、各個人の体質に合った食材を選び、配合し、調理して、毎日おいしく食べられる薬膳は健康増進に効果が期待できます。

  食べる医学
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中村元鴻(げんこう)「一般社団法人 国際伝統中医学協会 代表理事」

三大伝統中医学の一つ、推拿(すいな)の第一人者であり、生活習慣病の早期発見と回復を多く手掛け、自然治癒力、自己回復力を活性化する最高峰の手技療法を世界中で広く普及し多くの生徒を輩出。 一般社団法人国際伝統中医学協会の代表理事としても活動し、日本における、現代人のための中医学教育の第一人者として、医師、薬剤師、セラピストなどの健康のプロに対して、中医学観点からの健康管理法を教育してきた。また医療健康のプロフェッショナルだけでなく専門用語を使わない分かりやすい指導方法や、 豊富な臨床実績をベースにした、生活習慣病、 婦人病や中医学の専門的な診断法である舌診などのセミナーなどを行い、健康に敏感な一般層からも高い人気を集める。60,000人以上の診断実績と、3,000人以上の中医学教育指導実績で、医療関係、専門家などから多くの支持を得ている。